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特集:第3回 松下幸之助人生をひらく言葉

「失敗を運のせいにしない。」

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順調にいっているときは運がいいのだと思い、困難なときには自分のやり方がまずいからだと考える。そう考えたほうが自分を御していくうえにおいて楽ではないか、とこう思うのです。人間というものはともすれば、うまくいったら自分の腕でやったと思いがちですね。それがおごりに通じる。それでは具合が悪い。だからうまくいったのは自分の運がよかったからだと考えたらいいし、また事がうまくいかないときは運がないと思わずに腕がないと思う。(笑)そう考えて自己鞭撻をしてるんですよ。

ある日

松下幸之助は、幹部の部下から次のように話しかけられました。
「あなたのお父さんやお母さんは非常に偉い方だと思いますよ」
「なんでや、君」
「それは、あなたのお名前が幸之助だからです」
「ほう、君、それはどういうことや」
「命名者はご両親でしょう。子どもの幸せを祈って『幸』の字をつけるのは普通のことだと思います。しかし、ご両親は、『幸』のあとに『助』という字を加えておられます。単に幸せだけを願ってつけられたのではないのです。幸せは、努力しなければ得られないものだと思います。つまり、幸運の助けを得るためには、そこまで自分で努力しなければならない。だから、『この子には十分努力させますから、努力した場合には、神様、この子どもを助けてください』という意味でおつけになったのではないでしょうか。会社がここまで大きくなったのも、幸運に助けてもらうぎりぎりのところまで努力してこられたからこそだと思うのです」
「そんなこと言われたのは初めてやな。君らしい考え方や。確かにぼくは幸運やった...」
「...」
「ただ、ぼくは今まで六十年間、社会に出ていろいろやってきたけれど、その間、いつでも仕事がうまくいったときには、運がよかったなと思った。しかし、こと志と違ってうまくいかなかったときには、ぼくが悪かったと思ってきた。これだけは一貫してきたなあ...」
 人間だれも順境が続き、物事がうまくいくと、ともすると自分を過大評価し、うぬぼれてしまいがちです。しかしそれでは、せっかくの他人の意見や忠告も耳に入らず、失敗への道を歩むことになるでしょう。
 またうまくいかなかったときは、ともすると、「どうもついていない」と、運のせいにしがちです。しかし、これでは失敗の原因が見極められず、進歩発展には結びつかないのではないでしょうか。
 冒頭の言葉のなかにも、松下が事業を成功させてきたひとつの秘訣があるように思われます。

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▲松下幸之助の功績や考え方を見ることができる『パナソニックミュージアム松下幸之助歴史観』には、松下幸之助の銅像が設置。(所在地:大阪府門真市大字門真1006)

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【松下幸之助】氏とは、中村社長が尊敬する人物の一人。
パナソニックの創業者である松下幸之助氏が生前に語られたお言葉は英知と洞察にあふれています。
この特集ページでは、毎号ひとつずつ皆様にご紹介いたします。(PHP出版の書籍より)
【松下幸之助】日本の実業家、発明家。
パナソニック(旧社名:松下電器産業、松下電器製作所、松下電気器具製作所)を一代で築き上げた経営者である。異名は経営の神様。自分と同じく丁稚から身を起こした思想家の石田梅岩に倣い、PHP研究所を設立して倫理教育に乗り出す一方、晩年は松下政経塾を立ち上げ政治家の育成にも意を注いだ。

PHP総合研究所 研究顧問 谷口全平
松下電器の創業者である松下幸之助は、資金も学問もなくしかも病弱。
「徒手空拳」ですらなく、マイナスか らの出発であった。
にもかかわらず、かにして成功を収めることができたか?
本書は波瀾に満ちた94年生涯で語られた【人生をひら言葉】を軸に、松下幸之助の信条や経営観、人間としての喜びを解説した。「勝てばよし」がまがり通る今日、「なぜ生きるのか」を問う人生の書である。