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特集:第14回 松下幸之助人生をひらく言葉

「人生は終生勉強である」

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 "大器晩成の人"と言われる人がいますが、そういう人は、終生勉強であるという心がどこかに力強くひそんでいます。常に新しいものを吸収し、人の教えを喜んで受けていくという態度が、いかに年を重ねても失われていません。世間では、若くしてすぐ間に合う人がいます。そういう人のなかにはともすると、途中で強い希望や理想がなくなり、進歩が止まってしまう人がいます。やはり人間は急がずあわてず一歩一歩踏みしめて、そして向上していくという大器晩成型の人生を歩まなければならないと思います。

"大器晩成の人"が

前の言葉の通りなら、松下幸之助はまさに"大器晩成の人"と言えるのかもしれません。
 尋常小学校を四年で中退し、自分には知識が乏しいと自覚していた松下にとって、あらゆる人、あらゆるものが自分のいわば師匠だったのです。
 PHP研究所の新入所員にも、このような問いかけをしています。
「君は大学で何を勉強してきたんや」
「はい、心理学を勉強してきました」
「そうか、心理学かね。君、心理学とはいったいどのような学問か、わしに教えてくれや」
「心理学とは、幅広い学問でして...」
「ちょっと待ってくれ。君、知っているかどうか知らんが、わしは満足に小学校も出てない男や。むずかしいこと言われても分からん。君、一言で心理学を説明するとどういうことや」
 問われた新入所員は一言で言うことのむずかしさを思い知らされたと言っていますが、松下は自分の分からないことはどんなことでも、だれに対しても尋ねていました。それは、知らないことを聞くことは決して恥ずかしいことではない、という信念があったからでしょう。
 九十歳の正月、仕事の報告に来たPHP研究所の幹部にこのようなことを話しています。
「PHPもみんなの努力でだんだんと名が知れてきたな。けど今年はさらに奮起せんとあかんで。今な、PHP大学つくったらどうかと思っとるんや。そうや、普通の大学や。文学部とか経済学部とか法学部とかあるやろ。いや、わしは理事長にも学長にもならへんのや。わしはな、その大学の入学生の第一号になるんや。九十歳を一から始めるにはそれがええやろ。今まで九十年間生きてきたけど、まだまだ勉強せんならんことがいっぱいあるわけやな。それで勉強しようと思うんや」
 このことは実現しませんでしたが、松下は九十歳にしてまだ知的好奇心を持ち続け、何事からも学ぼうとしていたのです。"大器晩成の人"こそ"生涯青春の人"なのかもしれません。


■株式会社PHP研究所とは
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1946年(昭和21年)11月3日、松下幸之助によって創設され、出版事業を主体に行っている出版社。「PHP」とは、「Peace and Happiness through Prosperity」(繁栄によって平和と幸福を)の頭文字をとって作られた語です。
PHP研究所の代表作『女性の品格』坂東眞理子(著)。他にも250万部を越えた『頭がいい人、悪い人の話し方』樋口裕一(著)などがあり、月刊誌から単行本、PHP文庫、PHP新書など、年間の出版点数は600点を越えています。

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松下幸之助氏とは、中村社長が尊敬する人物の一人。
パナソニックの創業者である松下幸之助氏が生前に語られたお言葉は英知と洞察にあふれています。
この特集ページでは、毎号ひとつずつ皆様にご紹介いたします。(PHP出版の書籍より)

【松下幸之助】日本の実業家、発明家。
パナソニック(旧社名:松下電器産業、松下電器製作所、松下電気器具製作所)を一代で築き上げた経営者である。異名は経営の神様。自分と同じく丁稚から身を起こした思想家の石田梅岩に倣い、PHP研究所を設立して倫理教育に乗り出す一方、晩年は松下政経塾を立ち上げ政治家の育成にも意を注いだ。

PHP総合研究所 研究顧問 谷口全平
松下電器の創業者である松下幸之助は、資金も学問もなくしかも病弱。
「徒手空拳」ですらなく、マイナスからの出発であった。
にもかかわらず、かにして成功を収めることができたか?
本書は波瀾に満ちた94年生涯で語られた【人生をひら言葉】を軸に、松下幸之助の信条や経営観、人間としての喜びを解説した。「勝てばよし」がまがり通る今日、「なぜ生きるのか」を問う人生の書である。