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特集:第17回 松下幸之助人生をひらく言葉

「運の強いやつがいちばん偉い」

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 人間、いちばん偉いやつは何かということです。いろいろありますけれども、やっぱり運の強いやつが一番偉いと思うんです。(笑)頭がよくて、体格もよくて、社交もうまくて、金は持っている。大変具合いいな、そんならこの人にうちの娘を嫁さんにやろうか、ということで、やったところが、あくる年ころっと死んでしもうた。(笑)さっぱりわやですわ。そうしてみると、人間というものは運の強いやつがいちばん偉い。これはおもしろいことですよ。皆さんにこれを知ってもらいたい。

松下幸之助は

自分の会社の社員に対してだけではなく、ロータリークラブ、商工会議所、PTAの会合と、請われるままにさまざまなところで講演をしてきました。PHP研究所の資料室にはその録音テープが約三千本、三千時間ほどの声が残されています。
 それらを聴きますと、自分の体験から得たものを次代の人に少しでも伝えたいという思いが強かったからでしょうか、若い人に語りかけるときがいちばん熱っぽく、また楽しそうでした。
 冒頭の言葉は、昭和三十六年、早稲田大学に招かれ講演をしたときの一節ですが、ここで、自分は運がいいという信念に立とうと訴えています。
 「皆さんは相当に運を持っていると私は思うんです。運の弱い人間は、もう今日までに死んでおりますわ、第一。(笑)皆さんは生き残って大学に学んだということは、ある程度の運を持っておるわけです。その自己認識ができるかどうかということです。その自己認識ができると、おれは戦に行っても負けんぞという気になるんですね」
 松下は十五歳の夏に大阪湾で船から落ち、助けられたことがありました。
 また、事業を立ち上げたばかりの頃、自転車で自動車と衝突、跳ね飛ばされて落ちたところが電車道、寸前まで来ていた電車が止まってくれてかすり傷ひとつ負いませんでした。
 そうしたことから、【自分は運が強い。これならある程度のことはできるぞ】と、その後仕事をするうえでの自信につながったと言います。
 そうした体験から学生にこう続けるのです。
 「おれは大学にも学べた。やがて相当の成績で出られるだろう。今は人が足りないからどこへでも行ける。行けたらすぐに活動できるだろう。やがておれは重役とも社長ともなるだろう、おもしろいな、と考えりゃいいわけですわ(笑)」
 楽天的過ぎて能天気な考え方と言えなくもありません。
 しかし、【自分は運の悪いダメな人間だ】とくよくよしているより、【自分は運がいいんだ】【ツキがあるのだ】と考えるほうが、心もひらけ躍動し、さらに運やツキが舞い込む好循環が生まれてくるのでしょう。


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松下幸之助氏とは、中村社長が尊敬する人物の一人。
パナソニックの創業者である松下幸之助氏が生前に語られたお言葉は英知と洞察にあふれています。
この特集ページでは、毎号ひとつずつ皆様にご紹介いたします。(PHP出版の書籍より)

【松下幸之助】日本の実業家、発明家。
パナソニック(旧社名:松下電器産業、松下電器製作所、松下電気器具製作所)を一代で築き上げた経営者である。異名は経営の神様。自分と同じく丁稚から身を起こした思想家の石田梅岩に倣い、PHP研究所を設立して倫理教育に乗り出す一方、晩年は松下政経塾を立ち上げ政治家の育成にも意を注いだ。

PHP総合研究所 研究顧問 谷口全平
松下電器の創業者である松下幸之助は、資金も学問もなくしかも病弱。
「徒手空拳」ですらなく、マイナスからの出発であった。
にもかかわらず、かにして成功を収めることができたか?
本書は波瀾に満ちた94年生涯で語られた【人生をひら言葉】を軸に、松下幸之助の信条や経営観、人間としての喜びを解説した。「勝てばよし」がまがり通る今日、「なぜ生きるのか」を問う人生の書である。