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特集:第18回 松下幸之助人生をひらく言葉

「掃除ができない人間は何もできない」

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 皆さん掃除をやっていますね。その掃除は完全にできていますか。自分で考えて、八十点くらいできていますか。八十点くらい取れていればまあ及第点ですが、掃除ひとつできないような人間だったら、何もできない。皆さんは、「そんなことはもう三つ子の時分から知っている」と思うかもしれないが、ほんとうは掃除を完全にするということは一大事業です。百貨店に行っても、掃除の行き届いた百貨店とそうでない百貨店とは違う。掃除がどことなしにおそまつなところは、やっぱりはやりませんね。

松下幸之助は

家庭の事情で九歳から十五歳まで、大阪船場の商家で丁稚奉公をしていました。冬のどのように寒い日でも毎朝早く起きて店の前の通りや店内の掃除をする。掃除の仕方が悪いと、親方によく叱られたと言います。
 そうした体験を通じて、掃除のように一見何でもない些細なことであっても、なんと奥の深いものか、それだけに、そうしたことをきっちりやることがいかに大切なことか、結局それが基本で、それができなければ何もできない、ということを痛感してきました。
 ですから、独立して会社を起こしてからも、従業員に掃除、整理整頓、挨拶、報告など些細なこと、平凡なことの大切さを訴え続けてきました。ときには、工場の便所が汚れていることに気づいたときには、みずからバケツと箒を持ち、率先して清掃をしたこともありました。
 将来の日本を担う指導者を育成するために、昭和五十五年に開塾した松下政経塾でも、塾生に朝の掃除を義務づけました。冒頭の言葉はその塾生に語ったものですが、自分の周りを美しくすることができなくて日本を美しくすることはできないと言うわけです。
 当初、その意義が分からず、塾生には【掃除をするために入塾したのではない】という不満があったと言います。
 しかし、そうした塾生に対し、
 「掃除を真剣にやれば政治の真髄まで分かってくる。掃除すらできない者に政治ができるわけがない。掃除をバカにしていれば深いものを汲み取れない。だから政治の真髄をつかめる人と、単なる掃除で終わってしまう人が出てくることになる」
 と訴え、掃除を休んだ塾生に対しては、
 「掃除するということは信用や。信用を捨てるということは宝を捨てるのと一緒やで。その怠け心をいましめなあかん!無断で休んだら罰金もらうで。わしの心が痛むということの慰謝料や」 
 と叱っています。
 今、松下政経塾出身の国会議員が三十人ほど出ていますが、彼らは、この松下の願い、思いを、どのようにかみしめているのでしょうか。 

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▲公益財団法人松下政経塾
松下電器産業(現在のパナソニック)の創業者である松下幸之助によって、1979年(昭和54年)に設立された政治塾である。
これまでに、国会議員・地方首長・地方議員などの政治家を中心に、経営者・大学教員・マスコミ関係者など、各界に多数の人材を輩出している。



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松下幸之助氏とは、中村社長が尊敬する人物の一人。
パナソニックの創業者である松下幸之助氏が生前に語られたお言葉は英知と洞察にあふれています。
この特集ページでは、毎号ひとつずつ皆様にご紹介いたします。(PHP出版の書籍より)

【松下幸之助】日本の実業家、発明家。
パナソニック(旧社名:松下電器産業、松下電器製作所、松下電気器具製作所)を一代で築き上げた経営者である。異名は経営の神様。自分と同じく丁稚から身を起こした思想家の石田梅岩に倣い、PHP研究所を設立して倫理教育に乗り出す一方、晩年は松下政経塾を立ち上げ政治家の育成にも意を注いだ。

PHP総合研究所 研究顧問 谷口全平
松下電器の創業者である松下幸之助は、資金も学問もなくしかも病弱。
「徒手空拳」ですらなく、マイナスからの出発であった。
にもかかわらず、かにして成功を収めることができたか?
本書は波瀾に満ちた94年生涯で語られた【人生をひら言葉】を軸に、松下幸之助の信条や経営観、人間としての喜びを解説した。「勝てばよし」がまがり通る今日、「なぜ生きるのか」を問う人生の書である。