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vol.98 特集:第30回 松下幸之助人生をひらく言葉

「日本は太平洋に浮かぶ宝船」

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 短所は長所に、困難は飛躍へのチャンスにしていける。われわれはどんなときでも決して悲観することはないんです。発想の転換と努力によって、必ず禍を転じて福となすことができる。もうダメだとあきらめてくよくよしていたのでは豊かな姿は生み出せません。今日本は対外的にも国内的にもさまざまな問題を抱えていますが、それは発展への好機がいっぱいあるということ。そう考えることができれば、今の日本は無限の宝庫。いや、宝船と言ったほうがいい。太平洋に浮かぶ宝船、それが日本です。

第二次世界大戦で敗れ、

日本人は自信を失ったためでしょうか、戦後長いあいだ、日本は経済発展の条件に恵まれていない国だと多くの人が考えていました。
 すなわち、国土が狭い。その狭い国土も山岳部分が多く可住面積が少ない。加えて人口が多く天然資源もない。それらを数え上げ、日本は発展しにくい国だと言われていたのです。
 そのような不利な条件ばかりが指摘されていた昭和二十年代のこと、松下幸之助は『まさにその通りだ』と思う話を聞きました。
 ある政治家が、知り合いの外国人と汽車に乗って旅行をした。
 車窓の景色を眺めながら雑談をしているうちに、話が日本の国土のことに及んだので、その政治家は、日本の国は狭いからなかなか自立することはむずかしいということを言った。そうすると、その外国人は、ポケットからハンカチを取り出し、その真ん中をつまんで吊り上げ、
 「日本の国土はこうなっている。それを裾のほうの平野の部分だけを見て狭い狭いと言っている」
 そして、そっとひざの上に置いてこう言った。
 「このハンカチを平らに広げてみると二倍にも三倍にもなるじゃないか。もっと立体的にものを考えたらどうか。狭い国土に多くの人がいるから自立できないと言うが、見方、考え方を変えれば国土は広く、活用場面も広がるのではないか」
 松下がその話に共感を覚えたのはみずからも同じように考えていたからです。
 資源がないと悲観することはない。資源は他国に預けていると思えばいいじゃないか。狭い国に多くの人がいることは何も悪いことではない。効率がいいということではないか、と。
 戦後活躍した経済人が悲観的にならず、松下と同じように積極的に考えて懸命に復興に取り組んできたからこそ、世界の人々も驚くようなその後の発展が生まれたのでしょう。
 これからもわが国は、またわれわれは、さまざまなむずかしい問題に直面することでしょう。けれども、それに負けることなく、積極的な発想で勇気を持って事にあたれば、物事はいい方向に動いていくのではないでしょうか。


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松下幸之助氏とは、中村社長が尊敬する人物の一人。
パナソニックの創業者である松下幸之助氏が生前に語られたお言葉は英知と洞察にあふれています。
この特集ページでは、毎号ひとつずつ皆様にご紹介いたします。(PHP出版の書籍より)

【松下幸之助】日本の実業家、発明家。
パナソニック(旧社名:松下電器産業、松下電器製作所、松下電気器具製作所)を一代で築き上げた経営者である。異名は経営の神様。自分と同じく丁稚から身を起こした思想家の石田梅岩に倣い、PHP研究所を設立して倫理教育に乗り出す一方、晩年は松下政経塾を立ち上げ政治家の育成にも意を注いだ。

PHP総合研究所 研究顧問 谷口全平
松下電器の創業者である松下幸之助は、資金も学問もなくしかも病弱。
「徒手空拳」ですらなく、マイナスからの出発であった。
にもかかわらず、かにして成功を収めることができたか?
本書は波瀾に満ちた94年生涯で語られた【人生をひら言葉】を軸に、松下幸之助の信条や経営観、人間としての喜びを解説した。「勝てばよし」がまがり通る今日、「なぜ生きるのか」を問う人生の書である。