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vol.101 松下幸之助 人生をひらく言葉

「人間には本来悩みがない」

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 人間には本来悩みがないのである、悩みのないのが人間の本質である、とこう考えたいのです。これに強い信念を抱くようになりますならば、悩みは次第になくなると思うのです。本来悩みがないのですから、現実にあるのは人間がこれをつくり出しているのです。人間がつくり出しているのですから、その原因もまた人間にあります。ですから、素直な心で人間の本質を見つめてゆきますならば、その原因が次第に明らかになって、悩みの要因をひとつひとつ改善してゆくことができるようになると思うのです。

昭和二十一年十一月三日、

松下幸之助はPHP研究所を創設し、人間と社会のあるべき姿を研究すべく活動を始めましたが、当時毎日のようにさまざまなところへ出かけ、PHPの考えを訴えまわっていました。
 大阪駅頭に立ち、PHP運動への参加を呼びかけたこともありましたし、東西の本願寺の偉いお坊さんを前に、逆説法のようなかたちで宗教の興隆を訴えたこともありました。当時の記録を見ると、創設からその年の暮れの六十日足らずのあいだに三十数回の講演会、懇談会を開き、翌二十二年の一年間でも二百四十回ほどの講演や懇談を行なっています。
 その一環として毎月一回、大阪中之島の府立図書館で、一般の人も自由に参加できる公開のPHP定例研究講座を開きました。
 そこで松下は人間に関わるさまざまなテーマについて問題を提起し、質疑応答を重ねたのです。
 その二十四回目の定例研究講座で、松下は悩みということについて取り上げ、出席者に「人間は本来悩みがあってはならない。それは限りない繁栄、平和、幸福が本質的に与えられているからだ」と訴えました。
 続けて、「そのことを自覚しないときには、怒りや悲しみなどの心の働きが、そのまま悩みの原因となって、人間を苦しめることとなるが、悩みがないという自覚を持てば、いかに怒り、いかに悲しんでも、それをすぐに打ち消す作用が働いて、少しもそれが心の負担とならないようになる。怒っても直ちに回復し、悲しんでも直ちに平常に返るようになると思う」、むしろ「素直な心でこの人間本来の姿を自覚すれば、悩みは転じて向上の資となる」と述べています。
 松下が二十二歳で独立し、事業を起こしたときは、知識や資金にも乏しく、健康にも恵まれていませんでした。言わばないない尽くしからの出発でしたが、直面するさまざまな悩みを、見方や考え方を変えることによって克服し、事業を成功に導いていきました。
 そして、そのようななかでたどり着いた結論が、「人間には本来悩みがない」、また「そう考えたほうが人生を処しやすい」ということだったのです。

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↑サミュエル・ウルマンの詩から影響『青春』の言葉を掲げて話す幸之助
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↑集まった信者の前で講演する幸之助

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↑PHP研究所公式サイト
幸之助の思想や哲学、これまでの軌跡などがわかりやすくまとまったサイトです。

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松下幸之助氏とは、中村社長が尊敬する人物の一人。
パナソニックの創業者である松下幸之助氏が生前に語られたお言葉は英知と洞察にあふれています。
この特集ページでは、毎号ひとつずつ皆様にご紹介いたします。(PHP出版の書籍より)

【松下幸之助】日本の実業家、発明家。
パナソニック(旧社名:松下電器産業、松下電器製作所、松下電気器具製作所)を一代で築き上げた経営者である。異名は経営の神様。自分と同じく丁稚から身を起こした思想家の石田梅岩に倣い、PHP研究所を設立して倫理教育に乗り出す一方、晩年は松下政経塾を立ち上げ政治家の育成にも意を注いだ。

PHP総合研究所 研究顧問 谷口全平
松下電器の創業者である松下幸之助は、資金も学問もなくしかも病弱。
「徒手空拳」ですらなく、マイナスからの出発であった。
にもかかわらず、かにして成功を収めることができたか?
本書は波瀾に満ちた94年生涯で語られた【人生をひら言葉】を軸に、松下幸之助の信条や経営観、人間としての喜びを解説した。「勝てばよし」がまがり通る今日、「なぜ生きるのか」を問う人生の書である。