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vol.104 松下幸之助 人生をひらく言葉

「よい面を見れば勇気が生まれる」

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 百回事を行なって、一つだけ成ったとしたら、たいていの人は事の成らない九十九に自信をなくし、もう再びそのことを試みなくなるでしょうな。そうすれば、まさに失敗ですわ。しかし、よく考えれば百が百とも失敗したわけではない。たとえ一つでも事が成っているということは、他の九十九にも成る可能性があるということですね。そう考えれば勇気が出てきましょう。そして、事の成った一つを貴重な足がかりに、自信を持って九十九に挑むことができる。そうすれば、もはや成功したのと同然ですよ。

今では

多くの方々にお読みいただいている『PHP』誌も、今から四十年ほど前は発行部数も数万部で、主に企業や団体等への直接販売が中心でした。
 当時の定価は五十円、取次ぎ店に持って行っても、「値段も安いし、このような雑誌は商売にならない」とあまり歓迎されず、取り扱ってはもらえなかったのです。
 けれども、『もっと多くの方々に読んでいただきたい』という願いから、PHP研究所の所員が、書店を一軒一軒回り、返本なしの「買い切り」での取り扱いをお願いしました。当時、まだ『PHP』といっても知る人は少なく、その意味や趣旨から説明しなければなりません。また、雑誌や書籍というのは委託販売が慣習になっているため、「買い切り」となると、なかなか納得してもらえません。そのようななか、四国から帰ってきた一人の所員が、所長の松下幸之助に報告しました。
「二十軒回りましたが、二軒しか取り扱ってもらえませんでした」
 その所員は明らかに落胆した表情でした。
 しかし、それを聞いた松下は、目を輝かせてこう言ったのです。
「君、それはすごい成果やないか。十パーセントや。これなら、百軒回れば十軒、千軒回れば百軒扱ってくれる。これは大きな成果に結びつくな」
  それからまもなく『PHP』誌の発行部数は二十万部になり、五十万部、百万部と増えていきました。
 松下は、二宮尊徳があげているという話を引きあいに出すことがありました。
 それは、このような話です。田舎から二人の若者が江戸に出てきた。すると街角で一杯の水を売っている人がいる。それを見て一人の若者は「江戸では一杯の水も金を払わないと手に入らないのか。これはかなわん」と言って帰ってしまった。ところがもう一人の若者は、「一杯の水を売ってでも商売ができるのか。これはおもしろいところだ」と言って江戸に残ることにしたというのです。
 一杯の水を売っていたという事実は一つです。しかし、それを悲観的に見るとそれでおしまいです。けれども、楽観的に見るとそこに興味も湧き、いろいろ知恵才覚が働いてきます。
 松下自身、いろいろなハンディを負いながらも、物事のよい面を見てみずからを奮い立たせ、人生で直面するさまざまな難関を乗り越えてきたのです。

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↑月刊「PHP」は活動の機関誌であり、お互いが身も心も豊かになって、平和で幸福な生活を送る方策を、それぞれの知恵と体験を通して提案し考えあう場として、昭和22年から発刊を続けています。
執筆陣は各界著名人から一般読者まで幅広く、掲載される文章は短文、読み切り中心の構成、コンパクト(B6判・112頁・約80g)で小さなバッグにも入るためどこにでも持ち歩け、ちょっとした時間があれば読むことができます。



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松下幸之助氏とは、中村社長が尊敬する人物の一人。
パナソニックの創業者である松下幸之助氏が生前に語られたお言葉は英知と洞察にあふれています。
この特集ページでは、毎号ひとつずつ皆様にご紹介いたします。(PHP出版の書籍より)

【松下幸之助】日本の実業家、発明家。
パナソニック(旧社名:松下電器産業、松下電器製作所、松下電気器具製作所)を一代で築き上げた経営者である。異名は経営の神様。自分と同じく丁稚から身を起こした思想家の石田梅岩に倣い、PHP研究所を設立して倫理教育に乗り出す一方、晩年は松下政経塾を立ち上げ政治家の育成にも意を注いだ。

PHP総合研究所 研究顧問 谷口全平
松下電器の創業者である松下幸之助は、資金も学問もなくしかも病弱。
「徒手空拳」ですらなく、マイナスからの出発であった。
にもかかわらず、かにして成功を収めることができたか?
本書は波瀾に満ちた94年生涯で語られた【人生をひら言葉】を軸に、松下幸之助の信条や経営観、人間としての喜びを解説した。「勝てばよし」がまがり通る今日、「なぜ生きるのか」を問う人生の書である。


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↑PHP研究所公式サイト
幸之助の思想や哲学、これまでの軌跡などがわかりやすくまとまったサイトです。