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vol.107 松下幸之助 人生をひらく言葉
「白紙に戻して考える」
五分まけてくれとか、六分まけてくれというように値切られたら、今までの延長線上で安くしようということを考える。だからなかなかできないのです。けれども、半値にせえとか三分の一にせえとかということになれば、普通ではできない。普通でできないから、根本的に発想を異にせないかん。そうすると、できるかもわからへん。それが正直できたんです。『できる、必ずできる、やってみい』それでできたわけですな。だから、できないということはないわけです。考え方によっては。 |
貿易の自由化に直面し、
日本の自動車メーカーが品質の向上とコストダウンに懸命に努力を重ねていた昭和三十六年頃のことです。松下幸之助がカーラジオの工場に立ち寄ると、幹部が寄って深刻な顔で議論をしていました。
「きょうの会議は何かね」
「実は、T自動車さんから値下げの交渉があったのです」
事情を聞くと、T自動車から、ラジオの納入価格を即日五パーセント、向こう半年でさらに一五パーセント、合計二〇パーセント下げてほしいという申し入れが来ていたのです。
「現在はどのくらい儲かっているのかね」
「三パーセントしか儲かってはおりません」
「それは少ない。三パーセント自体が問題だ。その上に二〇パーセントも下げれば大変なことになるじゃないか」
「それでこのように会議をしているのです」
松下は、会議もいいがこれは容易ならない問題だと思いました。そしてこう考えたのです。
『これはできません、と断るのも一つの方法だ。しかし、それだけではあまりにも知恵のない話である。われわれは今このような要求を受けて驚いているけれども、先方は日本の自動車産業を世界に伍して発展させていくために懸命な努力を続けておられるのだ。われわれも同じ立場に立てば同じ要求をするだろう。この際「できない」という考え方はやめよう』そこで次のように指示を出しました。
「性能は絶対落としてはならない。デザインも先方の要望通り変えてはならない。しかし、それ以外については、二〇パーセントを引いてもなお適正な利益が得られるよう、抜本的に設計から考え直してみてほしい」
それから約一年、技術陣の心の革命と大いなる努力によって、要求通りの値下げをして、しかも、適正な利益が得られるようになったのでした。
人生も仕事も、一度これまでのしがらみから離れ、白紙に戻して見直してみる必要があるのではないでしょうか。
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