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vol.108 松下幸之助 人生をひらく言葉
「見方を変える」
何事も行きづまれば、まず自分のものの見方を変えることである。案外、人は無意識のなかにもひとつの見方に執して、他の見方のあることを忘れがちである。そして「行きづまった」と言う。行きづまらないまでもムリをしている。われわれはもっと自在でありたい。自在にものの見方を変える心の広さを持ちたい。何事もひとつに執すれば言行公正を欠く。深刻な顔をする前に、ちょっと視野を変えてみるがよい。それで悪ければ、また見方を変えればよい。そのうちに、ほんとうに正しい道が分かってくる。 |
扇風機は夏場だけ、
それも天候によって売れ行きが左右されるきわめて不安定な商品です。ですから松下電器の扇風機事業部では、昭和三十三年、扇風機一品だけでは事業の安定、拡大は図れないと、家庭用の排気扇を開発しました。しかし、当初は月産わずか二百台程度で、商売にはなりません。関係者が集まって検討し、排気扇を換気扇という名前に変えるなど、イメージの刷新を図るのですが、それでも在庫は増える一方でした。
そんなある日、事業部長がその状況を松下幸之助に報告すると、松下はこう言いました。
「そうか。それは急には売れんやろう。だけど必ず売れる方法があるはずだ。一度、主だった責任者が大阪のいちばん高いところにでも上って、打開策を考えてみてはどうか」
それは、行きづまっているのなら、一度、気分を変え、見方を変えて考えてみてはどうかという提案でした。
当時、大阪でいちばん高いところといえば大阪城でした。気楽な気持ちで大阪城天守閣に上った部課長や技術担当者は、『なんとたくさんの家が並んでいることか』と改めて思いました。そして、一人が言いました。
「これからの家にはまだ一台も換気扇がついていない。一軒一軒につけたらすごい需要になる」
やる気になって社に帰った幹部は、まだ四万五千台くらいしか普及していなかったときに、年間五万台を販売しようという大きな目標を立て、開発・販売運動を展開しました。その結果、デザイン、機能、価格とも画期的な公団住宅用小型換気扇を開発、それが採用されるなど、順調な売れ行きを示し、目標もまもなく達成されたのでした。
何事もできないと思えばできなくなる。理にかなったことであれば必ず成るという信念や志を決して失ってはならない、と松下は訴えていました。ですから、こうも言います。
「行きづまるのは行きづまるようなものの見方をしているからだ。行きづまらないような見方をすれば行きづまらないのだ」
【~松下電器換気扇の変遷~】
公団住宅で台所に取り付けられた一般換気扇から、浴室、トイレへと局所換気文化が根付くとともに、商品のラインアップも強化。
現在では、省エネであることはもちろん、健康で暮らしたいという人々のニーズに応える商品もグローバルに展開しています。