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特集:第2回 松下幸之助人生をひらく言葉

「最善の上にも最善がある。」

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会社としては、常に何事も最善と思ってやっているし、皆さんもそれに基づいて最大の努力を払っていると思います。しかし、立場をかえて、お客様の側から言うと、まだまだこう考えてほしい、こうあってほしいという希望が出るのも、また当然だと思います。そういうことを考えてみると、ものには最善の上にさらに最善がある。限りなく上には上がある。それを一段一段、そういう訴えを聞くたびに素直に聞いて、検討するということが永遠に必要ではないかと思うのです。

松下幸之助が

ある事業部を訪れたときのことです。事業部長や技術部門の人が、新たに開発したモデルを紹介し、その優秀性を説明しました。確かにそれは画期的と言ってよい創意工夫がいろいろ盛り込まれたすばらしい製品でした。松下は喜び、「ほんとうにいいものができた。みんなよくやってくれたな」と、開発にあたったメンバーの労をねぎらいました。
 が、それだけに終わらず、こうつけ加えたのです。
「今度は、この新商品をライバル会社が発売したと考えて、早速これ以上のいいものを開発してほしい」
 大変厳しい要素のようですが、松下電器がそのようないい製品を発売すれば、当然他社はそれ以上のものをつくろうとするだろう。だから、いいものができたからと、そこに安住してしまっては、それ以上社会に貢献することもできず、競争にも負けてしまう。『きょうの最善はあすの最善ではない』という考え、さらにいいものを生み出していかなければならない、と言うのです。このことは何も新製品の開発に限ったことではありません。
 営業部門の社員には、常々、「新製品というのは、物だけではない。販売の制度ややり方についても、たえず新製品をつくり出すことが大切だ」と訴えていました。それほどの部門の社員に対しても同じことでした。
 PHP研究所が京都の東山山麓、真々庵に置かれていた頃のこと、庭掃除をしている所員にも松下は、「ご苦労さんやな。君、掃除でも名人にならなあかんで」と声をかけています。
 どのように単純で簡単だと思える仕事であっても、奥行きは深いものだ、だから漫然とやるのではなく、やり方を工夫し、よりよい方法を生み出していけ、ということだったのでしょう。私たち所員は、掃除をしながら、その意味を実感したものでした。
 松下はこう言います。
「まだまだいい方法があるはずだと考えれば、必ず新しい工夫が生まれ、進歩が生ずる」


■真々庵とは...

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真々庵は、鐘淵紡績重役で佐竹本三十六歌仙絵巻の分割購入者の一人であった染谷寛治の元別邸です。この真々庵は数寄屋造の母屋と樹木に覆われた庭園から成っており、5千㎡ある庭園は東山を借景とする池泉回遊式庭園で、7代目小川治兵衛が1909年に作庭しました。その後1961年に、パナソニック創業者の松下幸之助が社長を退任してPHPの活動の拠点とするために、この別邸を購入しました。PHPというのは1946年に創設された「Peace and Happiness through Prosperity」の頭文字で、「物心両面の繁栄により、平和と幸福を実現していく」との意味が込められています。幸之助は自らの感性と哲学に基づいて京都の庭師・川崎幸次郎とともに、この庭園を大改造して松下流に整備しました。ここは真実真理を探究する道場であり、また辺りがしんしんと静かであることから、幸之助自身が真々庵と命名しました。



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▲松下幸之助の功績や考え方を見ることができる『パナソニックミュージアム松下幸之助歴史観』には、松下幸之助の銅像が設置。(所在地:大阪府門真市大字門真1006)

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【松下幸之助】氏とは、中村社長が尊敬する人物の一人。
パナソニックの創業者である松下幸之助氏が生前に語られたお言葉は英知と洞察にあふれています。
この特集ページでは、毎号ひとつずつ皆様にご紹介いたします。(PHP出版の書籍より)
【松下幸之助】日本の実業家、発明家。
パナソニック(旧社名:松下電器産業、松下電器製作所、松下電気器具製作所)を一代で築き上げた経営者である。異名は経営の神様。自分と同じく丁稚から身を起こした思想家の石田梅岩に倣い、PHP研究所を設立して倫理教育に乗り出す一方、晩年は松下政経塾を立ち上げ政治家の育成にも意を注いだ。

PHP総合研究所 研究顧問 谷口全平
松下電器の創業者である松下幸之助は、資金も学問もなくしかも病弱。
「徒手空拳」ですらなく、マイナスか らの出発であった。
にもかかわらず、かにして成功を収めることができたか?
本書は波瀾に満ちた94年生涯で語られた【人生をひら言葉】を軸に、松下幸之助の信条や経営観、人間としての喜びを解説した。「勝てばよし」がまがり通る今日、「なぜ生きるのか」を問う人生の書である。