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vol.118 松下幸之助 人生をひらく言葉
「心も大事、外見も大事」
ひとつの商品が売れるかどうかについては、その品物自体のよしあしによることはもちろんである。しかし、それだけでなく、その会社や商店のイメージということも、決して無関係ではない。というより、最近ではそういうものの比重がしだいに大きくなりつつあるようにようにも思える。そうなってくると、経営者たるもの、会社のイメージをよくするために、整形手術を受けなくてはならないようになるかもしれない。そこまではいかないにしても、態度物腰に十分気をつけなくてはならない。 |
松下幸之助が、
テレビが選挙運動において重要な役割を果たすようになって、アメリカのニクソン大統領が整形手術をしたということが新聞に載ったことがありました。
それを読んだ松下幸之助は、創業者の自分はもちろん、幹部社員も一般社員も、態度物腰が各方面に好感を与えるくらいでなければ、会社は発展しないと改めて思ったのでした。
松下にも、社長時代にこのような体験がありました。
東京に赴いたとき、ときどき寄っていた銀座のある理髪店で、店員が松下の頭を刈りながら、こう言ったのです。
「松下さん、もっと頭髪を大事にしなければいけませんよ。常にどんな刈り方がいいか、どんなヘアスタイルがいいか、自分で研究しなければいけません」
「ほう、そうですかね」
「ええ、そうですよ。銀座四丁目にあなたの会社のネオン広告塔がありますね。あのようにいくら宣伝していても、あなたの頭を見ればあなたの会社の製品は買う気がしない、というのでは困ります。やはり、常にきれいにしておいていただきた
い。あなたの頭も立派な会社の広告塔だと思うんですよ」
松下は、すっかり意見をされてしまいました。
しかし、その意見がいちいちもっともなだけに、大いに感心し、帰りにはその店員にチップをはずんだのでした。
それまで松下は髪の格好については無頓着なほうでしたが、それ以来、頻繁に理髪店に通い、髪や身だしなみには気をつかうようになりました。
また社員には、その店員さんくらい自分の仕事に誇りを持ち、熱心でなければならないと訴えていました。
「外見じゃないよ、心だよ」と言う人があるかもしれません。
確かにその通りではありましょうが、第一印象で判断されるのもまた事実でしょう。やはり松下のように、顔も頭も、自分の会社や家庭あるいは自分自身の「広告塔」である、そのくらいの気持ちを持って、周りの人に好感を与えられるよう努力していかなければならないのではないでしょうか。
それがまた世の中を明るくすることにもつながっていくのです。